内容を更新しました。(2024.03.18)
「LiDARの原理的誤差に対するLiDAR360の後処理性能」と題して、「レーザスキャナー(Zenmuse L1)の性能・測量精度・ノウハウ 第3回目」となります。
今回は、LiDARの誤差と、その誤差を幾何学的に処理するLiDAR360ソフトウエアの性能に関して、ビジュアル的にご紹介をいたします。すごくシンプルなテストですが、シンプルが一番現象を把握できます。
LiDARの誤差とLiDAR360による後処理
使用機材はDJI Zenmuse L1ですが、L1に限らずLiDARはその原理上かならず持っている本質的な誤差要因があります。LiDARの持つ誤差はここでは省略しますので、ご存知無い方は必ずリンクをご確認ください。誤差に対する推測が出来るようになります(実際にLiDAR360を使用するとどの誤差成分がどの位影響しているかもわかります)。
これからご紹介するのは、下記条件の比較になります。
- L1で取得したデータをDJI Terraにて、そのままlasにエクスポートしたもの
(点群精度最適化OFF、点群の平滑化OFF) - aをGreenValley InternationalのLiDAR360ソフトウエアで後処理したもの
下図のように横方向に段ボール5個とGCPをいくつか配置し、DJI Pilotにてマッピング飛行(高度50m、サイドラップ70%)にて測定したものです。段ボール①~③とGCP1④の点群の状態をチェックします。緑の線は軌道を表しています。
*以降の事例は、ラップ率やLiDARの設定に関係なく発生します。
Z方向の誤差
条件aの各場所の段ボールをサイドビューで見ると、高さ方向が2重になっているのがわかります。この段差は、約7cm程度あります。これは複数の軌道からのデータがずれて重なっている為に生じます。(ちなみに、地面の断面の厚みはこの現象に加えて、大小様々な砂や石、木などの材質の違い、斜面などの乱反射により、厚みがより大きく出ます)
条件bの後処理後では、補正され形状がはっきりしています。
条件 | ① | ② | ③ |
a | |||
b |
上記、bの後処理が本当に正しい処理をしているのかに関しては、GCP部分を見れば分かります。bでは、トレンドポイントに入力した既知座標のGCP(黄色点)付近の点群のみが残っている事がわかります。この例では、地面断面の厚みは、後処理前aは9cm以上ありますが、後処理後bでは3cm程度になります。
条件 | ④ |
a | |
b |
XY方向の誤差
XY方向も同様に点群が2重、3重になる現象は生じます。但しZ方向ほど顕著なずれは無いため、点の位置が微妙にずれ、結果、点が多いように見えます。きちんと後処理すると、b.のようになります。
条件 | GCP5 | GCP6 |
a | ||
b |
DJI Terraのオプションの有無による影響
多くのお客様がDJI Terraは、後処理ソフトと思われている方が多いようです。下図は、「UAVレーザーの精度確認試験実施手順書」に記載されている往復ルートで測定した場合(色々応用はしています)ですが、DJI Terraのオプション有無の違いがよくわかります。最適化オプションのみ記載します。LiDAR360の処理は入れていません。
XY方向の誤差
トップビューにて比較すると、最適化オプションをONにした場合、GCPの形状(丸形)は崩れ、円の中心が黄色点(基準点のGCP2、GCP6)から大きくずれている(誤差が大きくなっている)のがわかります。
条件 | GCP2(立体物) | GCP6(平面) |
最適化 OFF | ||
最適化 ON |
Z方向の誤差
前述のGCP2とGCP6のZ方向を観察します。最適化オプションONにより、一見、GCP6はZ方向の厚みが減って良く見えますが、前述のようにXY方向誤差は、GCP2やGCP6は、標識の中心が基準点から大きくずれているのがわかります。
GCP2(立体物) | GCP6(平面) | |
最適化 OFF | ||
最適化 ON |
平滑化もここでは詳細を記載していませんが、ある部分は良くなるが、他の部分は悪くなるといった現象が発生するため、弊社ではLiDAR360にて後処理をするときは、かならずTerraのオプションはOFF(平滑化も含めて)にするように推奨しています。
その他の要因による誤差
上記以外にも、LiDARの設定による間延び現象や、プロダクト特有?のオフセット的な誤差成分があります。そういったものは、ボアサイトキャリブレーションやストリップ調整とは無関係の誤差であるため、LiDAR360では補正出来ません。これらは、L1設定による回避や別途違う方法で補正する必要があります。ここでは述べていませんが、それらも正しく補正する事でXY誤差5cm以内は可能になります。
L1/L2は後処理しなくても精度が良い!?
いろんな方とお話をしていると、LiDAR360のように後処理しなくても精度が良いとおっしゃられる方がいらっしゃいます。2点ほど考え違いをされている可能性があります。
その1
ZY方向の誤差を求めるときに、TrendPointの平均座標を計算する計測コマンドを使用している。既知点を中心に平均座標を計算するため、どのGCPでも誤差は数mmになります。
誤った理解 | 正しい理解 |
Trendpointの平均座標計算機能を使ってしまうと、得られるターゲットの中心座標(XYZ)は数学的結果となるため、現場でプリズム等を置いて真値を測った位置と異なる可能性があるため不適切となります。真値を測った位置を特定し値を読み取る。 |
その2
Z方向の計測は、点群データの平均標高を計算する必要があります。理由は、レーザパルスは、放射した瞬間から広がりながら進んでいく特性があるため、標高調整用基準点に到達した際に、高さ(Z座標)への影響が生じるためです。そのため、平均座標を計算すると、よくも悪くも誤差の数字だけをみると、値は小さくなってしまいます。これが勘違いをしてしまう理由です。Z方向に対しては誤差だけではなく、厚みを意識する必要があります。このような内容を受けてか、最近の基準は、較差の絶対最大値、偏差など、平均値の計算方法など、具体的に記載され要求されています。LiDAR測量における調整点の座標計測方法を考える
最後に
初めてLiDARを触る方は、地面全体を見ていると上記の現象は気が付きにくいため、複数の箇所を検証するなどが必要になります。特に地物をフィリタリングする場合は、残った点群ではわからなくなりますので、フィリタリング前の確認プロセスが大事になります。
この記事がお役に立てれば幸いです。
お時間があれば、下記もご覧になってください。