Zenmuse L3の性能と設定ガイド

DJI Zenmuse L3の性能を確認してみました。性能確認の方法は色々あると思いますが、今回は公共測量の基準で確認しました。

概要

下表はL3の点群データに影響するパラメータですが、目的に応じて最適な設定を行うためには、これらパラメータによる影響を理解しておく必要があります。

Zenmuse L3 パラメータ

大項目 中項目 説明
Payload リターンモード リターン回数が多いほど点群の数は多くなります。植生がまばらな地域ではリターン回数が少ないモードを選択出来ます。

・シングル(1)

・デュアル(2)

・クワッド(4)

・オクタ(8)

・ヘキサデカ(16)

サンプリングレート サンプリングレートを設定する目安になります。この条件を逸脱する場合、正常な測距や点群のリアルタイム表示が出来なくなる可能性があります。

・100kHz:AGL<500m 物体<1500m

・350kHz:AGL<300m 物体<430m

・1MHz:AGL<100m* 物体<150m

・2MHz:AGL<50m * 物体<75m

*リアルタイムフォローをONにする必要があります。

スキャンモード
リニア(直線):
均一な点群分布と高精度な地形マッピングに最適。
星形:
森林、高密度な都市環境に最適。
ノンリピート(繰返しなし):
電力、森林に使用することでより完全な樹幹、送電塔のモデルを生成。
高度 DJI PilotのPoint Cloud Density(点密度)と連動。高度が低ければ密度は高くなり、高ければ密度は低くなります。
DJI Pilot 速度 飛行速度は点密度に影響し、速度が遅いほど点密度は高くなり、早いほど点密度は低くなります。
サイドラップ 横方向のオーバラップ。L3の場合、サイドラップも点密度に影響します。
オーバラップ カメラのみに反映されます。

*点密度は、DJI Pilot上(理論上)では、

  • 高度、速度、サイドラップによって依存する。
  • スキャンモード内では、ノンリピートを選択すると点密度は増加するが、リピートの他のモードには依存しない。
  • サンプリングレート、リターン数には依存しない。

公共測量の要件を満たすパラメータ設定

作業規定の準則では、UAVレーザ測量での一番厳しい条件は、数値地形図データ(地図情報レベル500)時の点密度は400点/m2以上となっています。ただ、これは結構厳しい要件であるため、点密度100 点/㎡条件でも確認しました。点密度100 点/㎡は、成果品目がグラウンドデータなどでも植生状況に応じてこの値まで必要になります。点密度を準則から以下に抜粋します。

成果品目 点密度 要求精度
(標準値)
要求精度
(対象)
数値地形図データ
(地図情報レベル500)
400 点/㎡以上 0.15m以内 水平位置
0.2m以内 標高
数値地形図データ
(地図情報レベル1000)
100 点/㎡以上 0.3m以内 水平位置
0.3m以内 標高
グラウンドデータ
グリッドデータ
等高線データ
10~100 点/㎡ 0.1m(RMS誤差) 標高

上記要件を満たすパラメータは何かを確認する為、下表の組み合わせてにて実際に飛行し測定を実施。パラメータの内容を考慮し、以下の組み合わせ(全8通り)にてデータを取得してみました。Typcal条件は2番としています。

Zenmuse L3 パラメータとDJI Pilot条件

検証番号 リターン数 サンプリングレート スキャンモード 高度* 速度(m/s) サイドラップ(%) DJI Pilot上の点密度
1 4 350K 直線 70 5 40 413点/m2
2 8 350K 直線 70 5 40 413点/m2
3 16 350K 直線 70 5 40 413点/m2
4 8 350K 星形 70 5 40 413点/m2
5 8 350K ノンリピート 70 5 40 653点/m2
6 8 1M 直線 70 5 40 413点/m2
7 8 1M 直線 100 5 40 289点/m2
8 8 350K 直線 50 5 40 579点/m2

*高度は、対地高度としており、M400Rのリアルタイムフォローを使用しています。

黄色:リターン数による影響確認

橙色:サンプリングレートによる影響確認

水色:スキャンモードによる影響確認

灰色:高度による影響確認(他のパラメータはTyp条件)

紫色:高度による影響確認(サンプリングレート1M時)

検証現場

これらのデータを取得する為に、平地(下図手前側)と山の両方(下図奥側)がある場所を選定し、一度の飛行で両方を含む点群データを取得しました。

取得した点群は、以下の図になります。真ん中に河川が横に流れ、河川をまたいで上部が平地、下部が山林となります。

また、今回の検証においては、簡易的ですが、調整点や検証点とするため平地部のみにGCPを下図のように3つ配置しました。1と3は、調整点と検証点の兼用、2は検証点としています。

検証結果

本記事では一部ではありますが、公共測量を行う上で重要な点密度及び精度、更に、Typ条件(2番)における断面をご紹介します。

点密度の検証

最初に結果から記載します。トレンドポイントを使用して高度別の点密度を確認したところ、以下の結果となりました。高度は、対地高度としており、M400Rのリアルタイムフォローで飛行しています。高度別の点群密度は、以下になります。飛行速度は5m/s固定時です。

対地高度50m 対地高度70m 対地高度100m*
点密度400/m2 ☓(74.6%) ☓(66.0%) ☓(0.3%)
点密度100/m2 〇(ほぼ100%) 〇(ほぼ100%) ☓(41.1%)

* 高度100mのみ、サンプリングレートは1M(他は350K)になっていますので、ご参考まで。

詳細は、以下となります。

検証番号8:8リターン/高度50m/速度秒速5m/サイドラップ40%

400 点/㎡での検証

達成率は、74.6%。河川で点群が取れていない部分含みますが、平地でサイドラップしていない部分の点群は、400点/m2を達成出来ていません。山林は、1パスのみですが密度は高い事が分かります。

100 点/㎡での検証

達成率は、97.9%。河川で点群が取れていない部分含むがある為、これを除けば100%。

検証番号2:8リターン/高度70m/速度秒速5m/サイドラップ40%

400 点/㎡での検証

達成率は、66.0%。河川で点群が取れていない部分含みますが、平地でサイドラップしていない部分の点群は400点/m2を達成出来ていません。山林は、サイドラップしていない部分でも密度は高い。

100 点/㎡での検証

達成率は、98.4%。河川で点群が取れていない部分含むがある為、これを除けば100%。

検証番号7:8リターン/対地高度100m/速度秒速5m/サイドラップ40%

400 点/㎡での検証

達成率は、0.3%。高度70m~100m間で急激に密度が落ちる事が分かります。

100 点/㎡での検証

達成率は、41.1%。

これらの結果から、点密度400/m2を求める時は、基本対地高度50m以下が必要となりますが、これはあくまでも公共測量の数値地形図データ(地図情報レベル500)の時の話であり、それ以外の時は点密度100/m2で十分の為、対地高度70mまで確保可能という事が分かります。飛行時の感覚としては、リアルタイムフォローは対地高度50mでも十分なマージンを持って飛行している事から、点密度400を確保したい場合は、対地高度30m程度でも特段心配ないだろうと思われます(但しその分、1回あたりの点群を取得出来る面積は小さくなる為、フライト回数は増えます)。

精度の検証

検証番号2(8リターン/高度70m/速度秒速5m/サイドラップ40%)における調整点による調整を行っていない値を以下に示します。検証点は、平地の3つのみですが、調整点による調整前のデータとしては、かなり良い値となっており、公共測量の基準に十分納まっています。L1の時は高度の振れは大きかったのですが、L3では非常に良い値となっています。

  検証点 測定値
誤差
点名 X Y 標高 X Y 標高 X Y Z
1 -24148.460 -155590.645 10.600 -24148.491 -155590.623 10.666 0.031 -0.022
-0.014
2 -24044.998 -155634.625 11.550 -24045.043 -155634.633 11.600 0.045 -0.008 -0.002
3 -23967.572 -155664.331 11.797 -23967.631 -155664.333 11.862 0.059 0.002 -0.013

下図はLiDAR360を使用しての計測の様子となります。

点名1

点名2

点名3

この条件時の対空標識のRGBでの見え方を下図に示します。

点名
RGB

断面の検証

検証番号2(8リターン/高度70m/速度秒速5m/サイドラップ40%)時の断面を下図に示します。平地部と山林部との間に灌漑溝があり水が流れていたため点群は取得出来ていませんが、それ以外はほぼ綺麗に繋がって見えています。地面の厚みも変に2重、3重になっている所が無く、薄い断面が取得出来ています。

<拡大1>

<拡大2>

地面の厚み

その他

リターン数による影響

リターン数による断面は、4リターン、8リターンではほとんど差は見られず、この測定では、16リターンの点群は存在しませんでした。また、ある条件下では、リターン数によって点密度の達成率に影響が出る事もわかりましたので、むやみにリターン数を上げるのは避けるべきという事もわかりました。

スキャンモードによる影響

目的によってスキャンのモードを変える事により、点群の取得状況が大きく変わる事もわかりました。簡単に動画にまとめてみましたので、ご確認ください。

DJI Zenmuse L3 スキャンモード

PPK処理による影響

DJI Terra PPK For Zenmuse L3/L2/L1/P1でも述べたように、L3もPPK処理が可能ですので、PPK処理前後の精度を比較する予定です。公共測量では、電子基準点以外の固定局を使用すると、固定局明細表という帳票が一枚増えてしまいますので、PPK処理を使用したほうが楽ですし精度も出ます。

最後に

大きくはこれらの内容を踏まえて、L3設定のご参考になれば幸いです。パラメータを色々振ってみると、パラメータによって結構点群は影響することがわかりました。例えば、上記ではご紹介しておりませんが、高度50mでも点密度400点100%を達成できる設定もあります。詳細は弊社のガイドラインをご参考に頂ければと思います。

尚、L3をご購入いただけますと、上記ガイドラインに加えて、Terraのリファレンスマニュアルも付属いたします。Terraのリファレンスマニュアルでは、PPK処理及び電子基準点情報の見方も記載していますので、お役にたちましたら励みになります。

以上です。

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