2025/10/06 更新
LiDAR SLAM 「SHARE SLAM S20」の機能と性能を確認してみました。SHARE S20製品の詳細は、リンク先をご確認ください。
概要
S20はS10のモデルチェンジ版となりますが、性能の向上はもちろん、S10でかなり減価償却が進んだとのことで大幅に価格を下げて登場しました。価格は公表出来ませんが、この性能でこの価格は、おそらく、ハンドヘルド型地上LiDARスキャナー の中ではコストパフォーマンスが一番高いのではないかと思われます。
S20は、スマホなどでS20の操作や点群の取得状況をリアルタイムで見ながら測定出来ます。
機能や性能に関しては、S10からの変更点として、カメラの画素数の向上(1200万画素→1600万画素)や機械式シャッターへの変更、LiDAR測定中におけるRGB用カメラのシャッターインターバルの最小設定が0.5秒まで設定できるようになり、LiDAR測定とは別に、測定中に写真撮影された生の画像を取り出して点群ソフトウエアなどに利用することが出来ます。RTK使用時は、位置情報のテキストファイルが生成されるため、高い精度の点群を写真から生成(Photogrammetry)することも出来ます。
また、前処理ソフトウエアであるPoint Cloud Studioもバージョンアップされ、日本のJGD2011座標系が使用出来る様になりました。また、今までは水平座標系のみでしたが、鉛直座標に関しても、11月のPointCloud Studio version 2.4で対応予定とのことです。これにより、RTKで測定したデータを楕円体高から標高に変換することも可能になります。
精度の確認
下図は、RTKで測定した全体のデータになります。精度の確認として、公園出入口アスファルト部、角の①と②の2点について、誤差を測定してみました。
検証点の座標をトレンドポイントに持っていき計測します。座標計測時は、反射強度表示が基本であり、また境界がわかりやすいに色に変更する必要があります。
① | ② |
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誤差は、5cm以内に納まる事を確認出来ました。単位mです。
点名 | 検証点 (VRS測定) |
計測値 (S20 RTK補正) |
誤差(検証点ー計測値) | ||||||
X | Y | Z(標高) | X | Y | Z(標高) | X | Y | Z(標高) | |
1 | -69454.301 | -107879.996 | 58.078 | -69454.333 | -107880.024 | 58.11 | 0.032 | 0.028 | -0.032 |
2 | -69456.901 | -107907.035 | 58.185 | -69456.933 | -107907.018 | 58.193 | 0.032 | -0.017 | -0.008 |
ちなみに、S20では、色なしでlasをエクスポートすることも出来ます。トレンドポイントでRGB表示すると、下図ようなイメージになります。私はこちらの方が好きです。
GPS受信感度の向上
S20は、S10よりGPSの受信感度が上がっており、森林の中でもRTKでの測定が出来るくらい感度が良くなっています。当然、上空の樹冠の状態によりRTKの状態は変わり、断続的に切れたりするなど不安定であり精度は落ちるとは思いますが、それでも森林においてはきちんとしたSLAMによる点群が生成されることは確認出来ました。精度はどの位になっているかは不明ですが、データが座標値を持つのは何かと便利です。きちんと測量したい場合は、周囲にGCPを置く事で正しく補正出来ます。
#この内容は、このような場所でもRTKで測定できる事を示しているわけではありません。RTKの受信品質が悪ければRTKでの処理は不可能になりますし、FIXしていてもマルチパスなどにより精度が大きく落ちます。あくまでもGPSの受信感度という観点でのお話です。
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上空は上図の状態でもRTKはFixとなるのは、すばらしいと思います。木漏れ日を見れば上空の状態はわかるかと思います。
森林の点群をMetashapeに取り込んでアニメーション機能で動画を作成してみました。セオリーに従って計画的に歩行ルートを検討することで、ほとんど死角の無い木の点群を取得出来ます。
SHARE Captureの使用感
SHARE Captureは、スマホなどにインストール(無料)してS20を操作するためのアプリです。リアルタイムで点群の取得状況を確認出来ます。RTKを使用する場合は、スマホ側に4G機能が必要になりますので注意してください。設定は、基本的にはRTK情報のみとなります。S20がWi-FI基地局となりスマホがS20に接続する形になります。一度接続しておけば、記憶してくれるため、現場では何も気にしないで楽に操作できます。
- RTKによる補正
- コントロールポジションによる補正
の二つの補正モードが可能になっています。
以上です。
コントロールポジションの登録
コントロールポジションを利用する場合は、測定中に標定点や検証点にS20土台の十字を合わせて置き、レジスターボタンを押し10秒ほど待つと登録されます。下記動画はS10の時のものですがS20も同じですので、ご確認ください。
弊社の駐車場でGCPの確認をしましたが、機能や性能に問題はなく、精度は5cm以内に納まっておりました。GCPは周囲4点のPT2、11、21、14、検証点は中心部のPT18、5です。
単位[m]
検証点 | ΔX | ΔY | ΔZ |
PT5 | -0.014 | -0.080 | 0.050 |
PT18 | 0.028 | 0.040 | -0.013 |
全体図(受光強度表示)
拡大図(検証点)
上記精度は、帳票作成システム LandStation-U SLAMオプション(LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル)の「平面直角座標への変換 精度管理表(検証点)」に準じています。LandStation-Uの詳細は、リンク先をご確認ください。
Point Cloud Studioの使いやすさ
Point Cloud Studioは、LiDARの生データをビジュアル化、ジオリファレンス、LASエクスポートします。ライセンスはS20に無料付属します。基本的な操作は、以下になります。操作は、非常にシンプルです。
- データの読み込みと、アウトプット先の指定
- RTK補正もしくは、コントロールポジション補正を選択します。
- 処理ボタンを押す。
ちなみに、コントロールポジションはcsvで座標を読み込む事が出来ます。また、LASは、自動的に、色付けされたものと、色なしの二つが生成されます。
その他
S20のグリップの底は、1/4インチネジ(メス)対応となっていますので、市販の5/8インチから1/4インチに変換するアダプターネジを使用することで、一般の測量ポールにも装着可能です。
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但し、SHAREからCentering Rod Adapterという専用のアダプタが販売されております。市販のアダプタは強度不足が懸念されますので、専用をお勧めします。
公共測量
S20は、LidarSLAM技術を用いた公共測量にも対応していることも確認しました。下図は、LandStation-Uでの結果ですが、数値地形図500の時400点/1m2の点密度を十分クリアしています。
このように、S20は、操作はシンプルながら精度の良い、綺麗な点群を取得出来ます。現場の土砂量を手軽に測りたい、ドローン(写真測量やLiDAR測量)の補間に使用したい、3次元の点群を簡単に取得したい、公共測量にも使用したなど、幅広いニーズに対応できるかと思います。
SHARE SLAM S20 デバイス本来の性能 はリンク先をご確認ください。
以上です。