LiDAR SLAM製品の比較・選び方(測量)

【更新日:2026/05/15】

ハンドヘルド型スキャナーであるLiDAR SLAM(スラム)製品が小型軽量化、点群の精細・精度の向上により、非常に注目が集まっており測量の手段として人気が高まっています。

ここでは、LiDAR SLAM製品を選択するに当たって注意すべき点を出来るだけ客観的に纏めました。メインは、測量、リバースエンジニアリングを目的としたものになります。また、弊社が実際に点群の状態確認や精度検証などを行った4選もご紹介します。

LiDAR SLAMの原理

LiDAR SLAMとは、LiDARセンサーを使用して周囲の3次元構造をリアルタイムで取得し、自己位置を推定する技術です。レーザを対象物に当て反射してくるまでの時間、角度により物体までの距離や位置を正確に測定することができます。

SLAM技術には、LiDAR SLAM以外に、Visual SLAM、Depth SLAMがありますが、LiDAR SLAMは他の方式と比較して、光量が少ない夜間でも測定でき、屋内でも正確という特徴があります。近年の製品は、LiDAR SLAM+Visual SLAMの二つの方式が装備されていますが、性能の進化によってVisual SLAMは敢えて非搭載製品もあります。

基本的に、LiDAR SLAMは周囲の3次元構造を把握して自己位置を推定する技術であるため、周りに何も無いオープン(草原など特徴がない)な空間を苦手としますので、これを理解して運用を考慮する必要があります。

LiDAR SLAM製品の選び方

LiDAR SLAM製品を選択するには、上記LiDAR SLAMの原理を理解した上で、利用環境、予算、運用目的にあった製品を選択することが大事になります。また、SLAMも多くのメーカからリリースされていますので、選定ポイントも記載いたします。

  • 利用環境
    本記事を参照されている方は測量用途が多いと思いますが、町の中のような特徴点が多い場所での計測なのか、河川、高速道路などオープンエリアが多い場所での計測が多いのか、を考慮する必要があります。製品によっては、弊社でご紹介する製品のようにオープンエリアでの測定を強化したものがございます。測量用途は、LiDARセンサーが少し地面側に傾いているタイプが望ましいです。また、測定したいレンジによりLiDARモジュールが異なりますので、どの位の範囲の測定が出来れば良いかも明確にする必要があります。大きなレンジを測定するとなるとLiDARモジュールが大型化し、コストが数倍にもなるからです。
  • 予算
    使用されるLiDARモジュールによって価格帯も大きく幅がありますが、最近はLivox製Mid360の小型モジュールを使用した100万~200万低価格帯の製品が人気です。測定レンジは対象物にもよりますが、実用は35m程度(SPECは70m)までになります。
    HesaiのXTシリーズを使用したLiDARは、メーカやXTシリーズのグレードによって価格は大きく異なりますが、200万~500万程度まで様々です。実用測定レンジは、SPECの約半分程度になります。一番下のグレードで60~70m程度(SPECは120m)、最上位グレードで150m程度(SPECは300m)までです。どちらのセンサーも地面に対しては角度が浅く反射率が低くなりますので、測量の実用は更にこの半分程度となると思ってください。

    Livox製 Mid360 Hesai製 XT16/XT32/XT32M2X
  • 目的(必要な機能)(Ⅰ)
    目的が測量用途の場合、多くの補正方式を持っている製品が良いかと思いますが、価格も比例する為、予算を踏まえて目的に合ったものを選択するのが良いかと思います。基本は、RTK、GCPの2つですが、メーカによってはPPK処理も対応しています。これは、RTKを使用したいけど4Gに接続出来ないという場所でも使用出来ます。更に、Greenvalley製品のように別の有料ソフトウエア(LiDAR360MLS)にて、軌道のズレを補正出来るものもあります(空中LiDARのコース間調整のイメージです)。
  • 目的(必要な機能)(Ⅱ)
    お客様の目的は様々ですが、SLAMの機種によってはトレンドポイントの点群と写真の重畳表示(通常ライセンスで利用可)を利用することが可能です。重畳表示は点群の不明確な部分を写真で確認し、長さや面積、体積、高さや角度測定などの詳細を確認することが出来ます。下図は、Ligrip O2の点群を取り込んだ表示例です。詳細はお問合せください。
  • 目的(必要な機能)(Ⅲ)
    一般的にメーカによってガウシアン処理機能に対応しているものと、対応していないものがあります。一般的にSLAM LiDARで金属物を測定するとハゲハゲの点群(下図左)になってしまいますが、それを3DGS処理するとかなり綺麗(下図右)になります。綺麗になるだけではなく、RGB表示でもエッジが正確に表示されますので、正確な座標測定、トレーズして図面化などリバースエンジニアリングに有効です。
  • 目的(必要な機能)(Ⅳ)
    公共測量に対応する場合、帳票を作成する必要があります。弊社では、帳票作成ソフトウエア LandStation-Uを扱っており、弊社で動作確認済のリファレンスマニュアルの提供とサポートが可能です。合わせてご利用ください。
  • SLAM選定ポイント(I)
    SLAMは、長年学者によって研究されてきたアルゴリズムですので、コアの部分はどのメーカも基本同じになります。また、SLAMに使われているLiDARは、LivoxやHesaiのXTシリーズが使われていますので、レーザという観点でも他社との差は生じません。メーカによって差が出るのはIMUとなります。IMUは各社オリジナルであるため、IMUの性能が悪いと測定時間が長いほどIMU蓄積誤差が大きくなり、点群の精度が落ちてしまいます。IMUの性能が悪いと、点群に段差が発生し2重3重になる事もあります。但し、IMUの蓄積誤差を軽減する為に、歩行の経路は基本クローズドループにする必要がありますので、現場の形状などによって歩行経路は、事前に十分検討する必要があります。これらのアドバイスを受けられる専門スタッフがいる専門店をご利用ください。
  • SLAM選定ポイント(Ⅱ)
    SLAMには、RGB用のカメラが搭載されています。カメラの画質は1000万画素台から5000万画素と様々ですが、カメラはレーザのRGB用ですので、カメラの画質に比例して綺麗に見えるという事はありません。1000万~2000万台がコスト含めた適切レベルに思われます。
  • SLAM選定ポイント(Ⅲ)
    カメラのシャッター方式に関してです。ほとんどのSLAM製品は、電子シャッターを採用しています。電子シャッターは、ローリング現象(真っすぐなものが真っすぐではなくなる)及びシャッターとRTKの同期が取れないといった欠点があります。産業用ドローンに使われているカメラは、これらの現象を防ぐためにメカニカルシャッターを使用しています。SLAMに関しても、モデルの正確さを追求したい(RGBも重要視する)場合は、機械式シャッターをお勧めします。一般的にレーザはRGBとは若干ずれが発生しますので、測量の点群は強度表示にして確認します。その為、電子シャッターでも大きな問題はおきませんが、機械式シャッターはモデルの正確さにこだわる人向け(リバースエンジニアリングなど)かと思います。

メーカ別特徴

それでは、上記の内容を具体的に比較いたします。弊社では、SHAREとGreevalleyの二つのメーカを扱っておりそれぞれ特徴があります。

外観

 SHARE SLAM S20  Greevalley O2Lite
SHARE S100シリーズ Greevalley O2シリーズ

SHARE製品のポイント

シンプルで扱いやすく、コストパフォーマンスが高い製品です。IMUの性能は高いため、2重、3重の層は発生しません。スマホのアプリと接続が簡単なので現場で迷う事なく、現場到着から1~2分で測定開始出来ます。安価でかつ基本性能が優れた機器で点群を取得したいというお客様向けです。

付属のPointCloudStudioは、次回のリリースにて日本の座標系完全対応(現在は水平座標のみ対応しており次回は垂直座標(ジオイド)対応予定)、ガウシンアン対応予定です。

また、モデルの正確さを高めるためにカメラは機械式シャッターを採用しています。

電子シャッター 機械式シャッタ

機械式シャッターは、撮影タイミングが正確であり、写真の中心部分にRTKは同期にしている為、Photogrammetryソフトウエアを利用してSLAMの点群とは別に、取り出した写真からでも点群を高精度に生成することが可能です。写真撮影インターバルの最小は0.5秒です。カメラ(RTK付き)の代わりとしても使用出来ます。弊社実験では、S20から取り出した写真にて、カメラ座標のみで、XY方向5cm以内、Z方向10~20cm程度の誤差でした。これは、ドローン用ペイロード(オブリークカメラ、1億画素カメラ)開発にて蓄積されたSHAREオリジナルの技術かと思います。

弊社でのSHARE SLAM S20の機能と性能の検証はリンク先をご確認ください。S100に関しては近くアップデート予定です。

Greenvalley製品のポイント

GreenvalleyのLiGripシリーズは、現場が大きな面積の場合に有効な分割測定機能や、ポールモード(*1)など多彩な機能があります。アクセサリーも豊富で例えば、エアボーンキットやビークルキットを使用すると、SLAMながらドローンや車にも搭載可能(O2-32/300グレードのみ対応)です。

*1 ポールモード:GPS受信(RTK接続)状態から建物内に入りGPSが切れても、一定時間RTK精度を保つ機能。

また、Greenvalleyは、LiDAR360やLiDAR360MLSの優秀なソフトウエアがあり、それらと親和性が高いのが特徴です。例えば、LiDAR360のForestryモジュールを使用すると、Ligripシリーズで測定した点群にて森林調査のTLSやALS(空中LiDAR時)を行う事が出来ます。下図はTLSの処理結果例です。個々の木にIDが振られ、位置座標、木の高さ、DBH、樹冠直径、樹冠面積などなどが出力出来ます。

LiDA360MLSを使用すると、SLAMの生データからガウシンスプラッティング処理することも可能です。このように多くの業務に対応する必要がある場合は、Greenvalley製品がお勧めです。

Ligripは、多才な目的に使用することが出来ますが、基本性能も素晴らしいものがあります。Greenvalleyは古くからH120/300のハンドヘルドLiDARを開発して多数の実績がありますが、多様なシチュエーションにおける性能レビューをGreenvalley社自ら実施しており、そのレポートを読むと非常に参考になります。

弊社でのGreenvalley Ligrip O2Lite精度検証Ligrip O2 32/300の実力の様子は、リンク先をご確認ください。

Greenvalley Ligrip O2 32/300で取得した点群データ(非常にクリアな点群が得られる)

SLAM製品共通

良いSLAMを使用すれば、例えば住宅の外観や内部を隅々点群で忠実に再現することが出来ます。これにより、たとえば 弊社で扱っている3Dsurveyのソフトウエアを使用することで、モデルから2次元の図面を作成し、AutoCADにエクスポートすることが出来ます。
3Dsurvey エックス線機能を使用した平面図/立面図/断面図の作成

ハンドヘルド 小型機(Livox製 Mid360) 詳細比較

SHARE S20  Greevalley O2 Lite
外観
LiDAR Livox製 Mid360 Livox製 Mid360
スキャンレート 200,000ポイント/秒  200,000ポイント/秒
カメラ解像度 16MP × 2 12MP × 2
Visual SLAM
カメラ
1.0MP×1 1.3MP × 2
バッテリー
駆動時間
2.5時間 2時間
RTKモジュール 組込 組込
重さ 1.2kg 1.3kg
IP等級 IP5x IP64
内部ストレージ 256GB TFカード 512GB SSD
LiDARセンサー
レイアウト
25度
地面をスキャンしやすい様に地面側に傾いています。
20度程度(メーカ未公表)
地面をスキャンしやすい様に地面側に傾いています。
RTK補正 サポート サポート
PPK補正 サポート サポート
絶対精度
(弊社RTK時の実測)
5cm程度 5cm程度
オープンエリアマッピング サポート サポート
アプリ iOS / Android iOS / Android
アクセサリー ハンドヘルド、測量ポール接続アダプタ ハンドヘルド、バックパック、フロントパック、ポール使用可

ハンドヘルド 大型機(Hesai製 XT32) 詳細比較

 SHARE S100-32PRO
(最上位グレード)
Greevalley O2 32/300
(最上位グレード)
外観
LiDAR Hesai製 XT32 Hesai製 XT32
スキャンレート  640,000ポイント/秒  640,000ポイント/秒
カメラ解像度 20MP × 4 12MP × 3
Visual SLAM
カメラ
無し 有り
(1.3MP×2)
バッテリー
駆動時間
3時間
(ホットスワップ可)
2時間
RTKモジュール 組込 組込
重さ 2.128kg 2.2kg
IP等級 IP5x IP5x
内部ストレージ 1T TFカード 512G SSD
LiDARセンサー
レイアウト
10度程度(メーカ未公表)
地面をスキャンしやすい様に地面側に傾いています。
10度程度(メーカ未公表)
地面をスキャンしやすい様に地面側に傾いています。
RTK補正 サポート サポート
PPK補正 サポート サポート
オープンエリアマッピング サポート サポート
アプリ iOS / Android iOS / Android
アクセサリー(無料) フロントパック、収納ケース及びバック付属 フロントパック、スモールアンテナ、ハイゲインアンテナ、エクストラバッテリ、収納ケース付属
オプション(有料) 無し バックパック、エアボーンキット、ビークルキット

SHARE SLAM S20/S100の使用感

SARE S20及びS100シリーズの詳細は、リンク先をご確認ください。

  • 付属するアプリ及びソフトウエアは、直感的に使用出来、非常にシンプルで使いやすい。
  • RGB表示が綺麗。樹木の点群は特に綺麗に見える。
  • RGB用の写真は、そのまま取り出す事が出来、MetashapeなどのPhotogrammetryソフトウエアで点群を生成することが出来る。カメラは機械式シャッターの為、フリッカー現象、ローリング現象が発生せず、RTKの座標が写真に同期している為、Photogrammetryソフトウエアでも精度の高い点群を生成可能。
  • 価格対性能のコストパフォーマンスが非常に良い製品。
  • IMUの蓄積誤差が非常に少なく、始点と終点でレイヤー(層)が発生しない。
  • 付属ソフトウエア(次回リリース)にてガウシン処理が無料で使用可能。日本の水平座標は対応済であるが、垂直座標は次期リリースで対応予定。
 SHARE SLAM S20

 SHARE SLAM S100シリーズ

Greevalley O2 Lite/O2シリーズの使用感

Greevalley Ligrip O2 Lite及びLigrip O2シリーズの詳細は、リンク先をご確認ください。

  • O2は測定中センサーがぐるぐる回る回転式の為、死角が少ない。
  • 多くの機能やアクセサリーがあり、多くの運用を想定した使い方をすることが出来る。例えば、バックバックキット、ドローン搭載キットなど。
  • 分割して測定したデータのマージ、ポールモード(外から建物内に入った場合一定時間RTK精度を保つ)など、機能が多彩。
  • 日本の座標系、ジオイドにも完全対応。
  • LiGripシリーズとして実績ある為、ソフトウエアの完成度は高い。
  • LiDAR360 ForestryモジュールにてTLS/ALS処理可能。
  • LiDAR360 MLS(別途ライセンス購入が必要)にて、軌道ジャンプを修正出来る。
  • LiDAR360 MLS(別途ライセンス購入が必要)にて、SLAMデータのガウシアン処理が可能。
Greevalley Ligrip O2 Lite
Greevalley Ligrip O2シリーズ

SLAM使用時の注意点

  1. SLAMは、GCP補正とRTK補正は排他的選択になります。RTKは市街地などではどうしてもGPS電波のマルチパスにより座標が飛んでしまい、点群に大きな影響が発生します。そのため、必ずGCP補正での測定を(保険として)実施する必要があります。
  2. GCP補正、RTK補正を使用しない場合は、必ずクローズドループを構成する必要があります。更地、林、市街地など、現場の状況は色々かと思いますが、基本的な考え方(弊社リファレンスマニュアル参照)に沿って、経路計画を検討する必要があります。GCP補正する場合でも、元データを出来るだけ良くするために、クローズドループを基本に考える必要があります。歩行経路の原理原則を知り、経路計画の検討を行ってから測定を行わないと性能の良いSLAMでもおかしなデータになる事があります。

最後に

これらをご参考に製品をご選択ください。ご相談頂ければここでは記載出来ないより詳細なお話をすることも可能です。

以上です。

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