LiDARの性能と後処理

「LiDARの性能と後処理」と題して、「レーザスキャナー(Zenmuse L1)の性能・測量精度・ノウハウ 第3回目」となります。

今回は、LiDARと、LiDARに関係するソフトウエアがどのような特性をもっているのかをビジュアル的にご紹介をいたします。すごくシンプルなテストですが、シンプルが一番現象を把握できます。

LiDARの誤差とLiDAR360による後処理

使用機材はDJI Zenmuse L1ですが、L1に限らずLiDARはその原理上かならず持っている本質的な誤差要因があります。LiDARの持つ誤差はここでは省略しますので、ご存知無い方は必ずリンクをご確認ください。誤差に対する推測が出来るようになります(実際にソフトウエアを使用するとどの誤差成分が大きく影響しているかもわかります)。

これからご紹介するのは、下記条件の比較になります。

  1. L1で取得したデータをDJI Terraにて、そのままlasにエクスポートしたもの
    (点群精度最適化OFF、点群の平滑化OFF)
  2. aをGreenValleyのLiDAR360で後処理したもの

下図のように横方向に段ボール5個とGCPをいくつか配置し、DJI Pilotにてマッピング飛行(高度50m、サイドラップ70%)にて測定したものです。段ボール①~③とGCP1④の点群の状態をチェックします。緑の線は軌道を表しています。

*以降の事例は、ラップ率やLiDARの設定に関係なく発生します。

Z方向の誤差

条件aの各場所の段ボールをサイドビューで見ると、高さ方向が2重になっているのがわかります。この段差は、約7cm程度あります。これは複数の軌道からのデータがずれて重なっている為に生じます。(地面の断面は、この現象が大きく出るため、厚みが出ます)

条件bの後処理後では、補正され形状がはっきりしています。

条件
a
b

上記、bの後処理が本当に正しい処理をしているのかに関しては、GCP部分を見れば分かります。bでは、トレンドポイントに入力した既知座標のGCP(黄色点)付近の点群のみが残っている事がわかります。この例では、地面断面の厚みは、後処理前aは9cm以上ありますが、後処理後bでは3cm程度になります。

条件
a
b

XY方向の誤差

XY方向も同様に点群が2重、3重になる現象は生じます。但しZ方向ほど顕著なずれは無いため、点が多いように見えます。きちんと後処理すると、b.のようになります。

条件 GCP5 GCP6
a
b

DJI Terraのオプションの有無による影響

多くのお客様がDJI Terraは、後処理ソフトと思われている方が多いようです。下図は、「UAVレーザーの精度確認試験実施手順書」に記載されている往復ルートで測定した場合(色々応用はしています)ですが、DJI Terraのオプション有無の違いがよくわかります。最適化オプションのみ記載します。

  1. 最適化 無
  2. 最適化 有

XY方向の誤差

トップビューにて比較すると、最適化オプションをONにした場合、GCPの形状は崩れ、円の中心がGCPから大きくずれている(誤差が大きくなっている)のがわかります。

条件 GCP2(立体物) GCP6(平面)
a
b

Z方向の誤差

最適化オプションONにより、GCP2は既知点との誤差は大きくなり、GCP6は一見厚みが減っていますが、一方でXY方向(上図)は悪くなっているのがわかります。

GCP2(立体物) GCP6(平面)
a  
b

平滑化もよくわからない現象が発生するため、弊社ではLiDAR360にて後処理をするときは、かならずTerraのオプションはOFF(平滑化も含めて)にするように推奨しています。

その他の要因による誤差

上記以外にも、LiDARの設定による間延び現象や、プロダクト特有?のオフセット的な誤差成分があります。そういったものは、LiDAR360補正のスコープ外ですので、設定による回避や別途違う方法で補正する必要があります。このようなLiDARの特性とソフトウエア処理の特性を理解し、正しく補正する事で誤差5cm以内は可能になりますし、地面の厚みも補正前に比較して1/2~1/3程度に確実に薄くなります。

最後に

初めてLiDARを触る方は、地面のみ測定していると上記の現象は気が付きにくいためご注意ください。特に地物をフィリタリングする場合は、残った点群ではわからなくなりますので、フィリタリング前のプロセスが大事になります。

この記事がお役に立てれば幸いです。

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