Zenmuse P1を使用する効果
今回は、Zenmuse P1を使用する最大の効果は何か?をまとめたいと思います。センサーが大きい分、より大きな面積を測量出来るのではないかをデータとして確認してみました。比較のベースは同じくDJIのPhantom4 RTKです。
一般的なメリット
一般には、より大きいセンサーのカメラを使用すると、以下のメリットがあります。
- 写る範囲が大きくなる
- 階調表現が豊かになり白飛びや黒つぶれを抑える(1画素毎の受光面積が大きくなる為)
- 暗所性能が高くなりノイズを抑えられる(ISO感度を高く出来る)
- レンズの交換が出来る(50mm/35mm/24mm)
1.の写る範囲に関しては、レンズの焦点距離が同じだとすると、下図のようにZenmuse P1(フルサイズ)とPhantom4 RTK(1インチ)の差があります。単純に計算しますと、面積比で7.4倍の差があります。しかし、実際にはセンサーが小さいほどカメラに使用されるレンズの焦点距離は短く(広角レンズ)になりますので、そこまでの面積差は発生しません。が、広角になる分、その歪による影響は大きくなります。
カメラのSPEC
比較対象のカメラのSPECは以下になります。
項目 | Zenmuse P1 | Phantom 4RTK |
SPEC | ・センササイズ:35.9×24 mm ・有効画素45MP ・35mm/F2.8 |
・センササイズ 1インチ ・ 有効画素20MP ・24 mm(フルサイズ換算)/F2.8 |
Metashape処理の比較
結果を以下の表にまとめます。撮影は、Zenmuse P1もPhantom4 RTKもOL80% SL60%で撮影したものになります。
項目 | Zenmuse P1 | Phantom4 RTK |
写真枚数(ディスク容量) | 計186枚(3.1GB) | 計300枚(2.4GB) |
アラインメント(高) | 2分 53 秒 | 4分03秒 |
高密度点群(中) | 15分 50 秒 | 19 分 11 秒 |
メモリ消費量(高密度点群処理時) | 5.89 GB | 2.95 GB |
マーカ設定した写真枚数 (手作業の回数) |
107枚 | 72枚 |
効果1:写真枚数が削減できモデリング処理が早くなる
写真枚数は、約60%程度に減りました。今回、測量面積があまり大きくなく、対象エリアの最初と最後の飛行パスが内部の面積に対して比率が大きくなった(次章参照)のもあり、当初予測していた50%までにはなりませんでしたが、もっと大きな面積であれば50%に近くなると思われます。
また、Metashapeの処理時間は、写真容量はP1の方が大きいものの、写真枚数が少ないほうが処理時間は短いという事も確認できました。これは、Metashapeの内部処理において、管理している写真のチェーンが少なくなり、その分処理タスクが少なくなるからと思われます。もちろん、データ容量は増える分、メモリ消費量は増える結果となりました。
効果2:精度があがる
映る面積が大きくなることで、マーカを設定する写真枚数は72枚から107枚に増加しています。手間は増えてしまいますが、多くの写真にマーカが反映されることで精度が向上する事にもなります。これは、第1回目、2回目で報告した精度と比例していますので、方向性として間違いないかと思います。
効果3:飛行高度を高く出来る
今回、35mmレンズを使用していますが、地上解像度1.0cm/pixで高度80m、50mmレンズを使用すれば高度110m程度まで上げる事が出来ます。これは、すなわち現場の標高差が100m程度あっても、地形モードを使用しなくとも通常の水平飛行で撮影が可能という事を示しています。(但し、被写界深度を深くするため、絞りはきちんと入れる必要はあります。詳細は、第4回で説明しています。)
今まで、Phantom4 RTKなどでは、地上解像度1.0cm/pixで高度は30m後半でしたので、高低差がある所では地形モードを使用する必要がありました。地形モードというのは、事前にラフな(高めの)高度で撮影を行い正確なDSMモデルを作成し、それを元に飛行プランを作成しなくてはいけませんでした。
P1を使用する事で、このような事前の工数を削減できますし、地形に沿って飛ぶというのは斜面にぶつかるというリスクもあります。それらの負担が減るのはとても大きなメリットです。現場のクレーンも特殊な物を除いて気にしなくても良くなります。
飛行パス(カメラ位置)
ご参考までに、今回撮影で飛行した経路になります。Metashapeで推定したものになります。
Matrice300Rの場合は、図の左下の途中からスタートしてますが、Phantom4 RTKは図の右下からスタートし最後のパスまで撮影しています。測量エリアは、少し台形(上が広く下が狭い)型だったため、カメラの画角の違いにより、飛行コースの違いが発生しています。但し、どちらも測量範囲に対して、どちらも十分なオーバラップを確保しています。
Matrice300RTK(P1) | Pantom4 RTK |
飛行時間
飛行時間は、所定のスタートポイントまで飛行し、最初の写真撮影開始から最後の写真撮影終了までの間の時間を計測しています。Phantom4 RTKの場合は、インターバル撮影の最小間隔が2秒の為飛行速度を上げる事が出来ませんが、P1のインターバルは0.7秒と短いため、飛行速度を10m/s以上にあげる事が可能です。今回は中間程度の5m/Sで設定しています。理由は、あまり速度を上げると写真のぶれが大きくなる為です。
Matrice300RTK(P1) | Pantom4 RTK | |
飛行時間 | 7分 (水平速度5m/S設定) | 13分 |
考察
当初の予想通り、P1を使用する事で写真枚数が約半分になり、Metashapeの処理時間は短くなっています。大きな測量面積になるほどこの効果は大きくなると思われます。但し、メモリ消費量は増えるので、処理するPCのメモリもケアする必要がありそうです。