今回は、点群ソフトウエアの本質をお話ししたいと思います(文字ばかりですみません)。
最初に、弊社では、Agisoft社Metashape、Epic Games社のRealityCaptureの製品を扱っておりますが、この2製品を扱っている理由からお話ししたいと思います。
Metashape
Metashapeは、以下の大きな特徴があります。
- 点群ソフトウエアの老舗と言え、ドローンが登場する前のはるか昔から、セスナ飛行機を使用した航空会社の写真測量時代から使われている。
- 多くのフォーマットに対応しており、後続ソフトウエアへエクスポート可能。
- 他のソフトウエアでは点群化出来ないカメラの画質でも点群化できる、カメラの画質とは、メーカがセンサーから出力された味気ない画像を人間の目で見たような画質に作りこむ事であり、その味付けはカメラやメーカによって大きく影響します。Metashapeは、それらに影響しにくいのが特徴です。例えば、DJIドローンのカメラの中でも、他の点群ソフトウエアでは点群化出来ないカメラがあります。しかし、Metashapeは、これらのカメラでも、ほとんどの写真を点群化出来ます。
通常、点群ソフトウエアは、基本的にノイズを除去し、必要な情報のみを点群化します。ノイズの除去と点群の再現性は相反するものがあり、ノイズを除去しすぎると表面の細かなディテールを失いますし、ノイズを除去しなければ、点群化が出来ないケースが発生します。Metahshapeは、これらのバランスが非常に良いといえ、多くのカメラ画質の点群化が可能です。他の製品では対応していない魚眼レンズにも対応しています。これらは、ソフトウエアに対するメーカの思想の現れかと思います。
RealityCapture
近年開発された点群ソフトウエアです。Metashapeとは少しコンセプトが違っています。前述のように、Metashapeは幅広い用途、カメラに対応していますが、RealityCaptureは、正確な復元、モデリング画質に赴きを置いているといえます。従って、Metashapeのようにどんなカメラの画質でも点群化出来るとは違い、カメラ画質はある程度選ぶが、正確な復元とモデリング画質、そして高速処理に赴きを置いています。これは、実際にトライアルライセンスで触られるとよくわかるかと思います。航空測量用途も使えますし、VFX、アニメキャラ、歴史的建造物、マンションや自動車などの宣伝用途にも使えると思います。例えば、建物外観、建物内部をそれぞれモデリングし、それらを繋げることで、外観や中をどの方向からでも見ることができます。まだ新しいソフトウエアの為、UAV測量で言えばジオイドの変換が出来ないという部分があります(近い将来対応予定です)が、エクスポートして、変換したデータをインポートする事は可能です。RealityCaptureは、本記事のアイキャッチ画像のように、地面のディテールを忠実に再現しますので、2本目以降のライセンスは、こちらを選ぶべきかと思います。標高の変換は、こちらをご参考にください。
RealityCaptureをUAV測量で使うときの注意点 -標高への変換-
このような特徴がありますので、最初からUAV測量にRealityCaptureを導入というのは、あまりお勧めできず、最初はMetashape、2本目はRealityCaptureという選択肢が良いように思えます。DJIドローンのカメラ画質は、一般的なカメラ画質より、鮮やかに見える味付けが強いため、ファントムシリーズのカメラは問題ありませんが、Inspire系のX5系カメラではアラインメントは出来ません。本来、測量系のカメラは機械式シャッターが望ましいのですが、X5系は電子シャッターの為、お勧めは出来ません。
UAV測量用途以外であれば、カメラは自由に選択できますし、通常のカメラであれば、ガメラ画質を選ぶということはほとんど無いと思います。
点群ソフトウエアの本質
前置きが長くなりましたが、サポートやコンサルティングを通して、点群ソフトウエアの導入を検討されている方向けに、点群ソフトウエアの本質をまとめることにしました。
- 点群ソフトウエアは、前後左右の重なりを持った複数枚の写真から、写真間の共通点を見出しそれを点とした集合体としてモデリングします。
→この原則を知っていると、写真撮影方法がおおよそわかります。 - 各写真間の共通点が多ければ多いほど、三角測量によるカメラと被写体との距離の推定や角度推定が正しくなり、正確な復元につながること。
→この原則を知っていると、写真撮影のオーバラップ率が大事なことがわかります。 - 三角測量による距離や角度の推定は、レンズのひずみが大きく影響します。レンズのひずみとは、非常に簡単に言えば、真っすぐな物が真っすぐではなくなることです。その現象は、レンズの中心よりも端になるほど顕著に発生します。従って、対象物や対象領域の端まで、画像の中心に写るまで余裕をもって撮影することが大事です。(私はのりしろを大きく取ってくださいと表現します。)
- 正確な3次元復元をするためには、実態に即した各種パラメータの設定が大事であること。UAV測量の場合、既知点により補正(レンズのひずみ等による推定誤差の補正)をかけますが、実態に即さない既知点の精度を設定しても、正確なモデリングにはなりません。Metashapeは、すべてのパラメータの最適解を求めるツールですので、実態以上に良すぎるパラメータ、悪すぎるパラメータを設定しても、最適解(つまり精度)は出ませんので、常に適切な値を設定する事が大事です。
点群ソフトウエアを扱う上で、これらを基本に考えて頂きますと、より良い成果が得られるかと思います。ある程度慣れてくるまでは、上記の本質は、なかなか理解できないかもしれません。まずは点群ソフトウエアを選択するうえで、誤った選択をしないためにも、最初にご紹介した内容をご参考にしていただき、慣れてきた段階でこの本質を思い出して、より使いこなしていただければと思います。
以上です。