最新の状況を鑑みて記事を更新いたしました。記:2024.01.30
点群ソフトウエアに必要な性能のPCに関してです。
点群ソフトに必要なパソコンの性能は?
下表は、以前、Agisoftメーカのホームページに記載されている構成例を基に、日本の最新の状況を反映し表にまとめたものです。PCのメモリも128GBが主流となってきましたが、一部には256GB対応のマザーボードも発売されています。
ベーシック構成 |
アドバンス構成 |
エクストリーム構成 |
|
Windows |
Windows10 Home64bit |
Windows10 Pro 64bit | |
CPU |
Intel Corei7 |
Intel Core i9 |
Workstation |
Memory |
16 GB×2 (32GB)~ |
32 GB×4 |
256GB~ |
GPU |
RTX3060~4060 | RTX3070~RTX4090 | 複数毎 |
予算 |
20万~30万 | 30万~70万 | 数百万~ |
ターゲット業種 |
測量用途 (小~中規模) |
測量用途 (大規模) |
研究用途、 超大規模用途 |
処理のスピードと規模は、後述しますが、予算との兼ね合いでどれだけ表の右側にするかという選択になります。測量を専門として大規模処理も考慮する人はアドバンス構成、そうではない人は左側になります。エクストリームは、ワークステーションになりますので、研究レベル、超大規模用途となるかと思います。
大規模を専門的に行わない限り、後述する拡張性を考慮しておく事でベーシック構成でも十分業務に使用出来るかと思います。PCやワークステーションは、お金をかければキリがなく、また、2~3年もすると、アドバンス構成がベーシック構成の金額で購入出来るようになりますので、最初から欲張り過ぎないようにするのも大事かと思います(特に個人は)。但しメモリは出来るだけ将来の拡張性を考慮し大容量に対応したマザーボードやOSの種類を選択したほうがよいです。これに関しても、後述します。
Windowsに関して
拡張性という点で言いますと、Windos10 Homeは、メモリの最大が64GBまでとなります。128GBまでの拡張を考え、Windos10 ProもしくはWindows11 Proを推奨します。
電源に関して
ご相談があれば、必ずアドバイスをするのが電源の容量です。あまり気にされないお客様が多いのですが、市販のPCの電源は最低限の容量のものしか装着されていません。例えば、最大300W消費電流のPCであれば、電源も300Wの程度の物になります。およそ消費電流と同程度の容量のものしか装備されておりません。同程度の余裕度ですと、電源のメーカや個体差にもよりますが、Metashapeを毎日処理する使い方ですと1年持たない可能性が非常に高いです。例えで言いますと、パワーの無いエンジンで常に全開走行するような物です。エンジンも電源も同じですが、熱によって劣化が進みます。予算にもよりますが、出来るだけ容量の大きい電源をご選択ください。2倍が理想ですが、最低でも1.5倍は確保したいところです。2~3万程度あれば良い電源を購入出来ますが、7、8千円程度の電源にしたことによって、何十万のPCがクラッシュしHDDや他の機器が壊れてしまうというのは、良くある話です。また電源を選べる方は、日本製のコンデンサを使用したものを購入ください。
#弊社でライセンスを販売したお客様は、年間約10人程度、PCがクラッシュされています。(ありがたいことに、この記事を出してからは激減しました)。ライセンスを納品してから、1年位で壊れているようです。PCの復旧のため、HDD交換、Windowsを再インストールしますと、ライセンスが修理前構成のPCにロックされてしまいます。
GPUが処理速度を決める
GPUとは、Graphics Processing Unit(画像処理装置)の略ですが、通常PCにはオンボードと呼ばれるマザーボードに最初からGPUが搭載されている物と、個別にグラフィックボードとしてGPUが搭載している物の2種類あります。前者は最低限の性能、後者は値段によりピンからキリまでの性能となります。いわゆるゲーミングマシンと呼ばれるものはこの後者の性能の良いものとなります。ゲームが一番PCの性能を要求します。
既にMetashapeを業務で使用している方でも、CPUやメモリは最新スペックでも、GPUはオンボードの物という方がいらっしゃいます。
ご存知のように、Metashapeは画像データを大量に処理するため、CPUよりもGPUの性能が処理速度を支配します。少し内部の動きを簡略的に説明しますと、CPU処理というのは、内部ではプログラムをメモリーから読み込み、そのプログラム内容をデコード(解釈)し、そして初めてCPUが画像の演算処理を行います。処理の過程においては、CPUの演算結果を一度メモリに退避し、次の演算結果が出たらまたメモリから先ほどのデータを戻して両者を演算、という具合にデータが行ったり来たりします(キャッシュの概念はここでは省いています)。
対して、GPUは決まった処理はハードウエアで構成されていますので、そのまま画像処理を左から右に流れるように処理を行っていきます。プログラムやデータをメモリから逐次読み込み/保存する必要はないため、非常に高速なのです。また、その間CPUは別の処理を行う事が出来ますので、より全体の処理が速くなります。
しかしながら、GPUはかなりざっくり言うとハードウエアで構成されている関係上、柔軟性が無いのが欠点でして、Metashapeのようなソフトウエアに対応できるGPUの種類には制限があります。Metashape Ver.2.1で推奨されているグラフィックボード(GPUが搭載されたボード)は、以下の通りです。
NVIDIA:Vulkan テクノロジーをサポートしているGeForce GTX 8XX/Quadro M4000以降。
AMD:Radeon R9 29x シリーズ / FirePro W9100 および 17.1.x ドライバー以降。
GeForceは世界のスタンダードとなっているGPUであり、RadeonはGeForceの互換となります。どちらも基本的には数字が高いほど性能が良くなります。
Geforceの最新最強であるRTX4090は、ブランドにもよりますが、安値でも30万近くします。1世代前の3080では、安いものでは10万程度で購入できるようになりました。
基本的には、RTX10シリーズの最強はRTX1080、RTX20シリーズの最強はRTX2080となっており、RTX30シリーズの最強はRTX3080、RTX40シリーズの最強はRTX4090です。そのシリーズの後期型になると、より早いものは、後ろにtiとかsuperとか付きます。
測量メインは、最新SPECを購入ください。測量がメインでなければ、RTX20シリーズや30シリーズでも十分です。常に最新ボードを購入できる資金があればよいですが、1、2年もするとお手頃価格になりますので、デスクトップPCの場合は、手ごろな値段のグラフィックボードだけを2年サイクル位で交換したほうが長期的な平均性能と、性能に対するコストがよいと思います。但し、ノートPCの場合は、交換は出来ませんので予算の許す限り、その時の最大性能のPCを購入するのが良いかと思います。
尚、デスクトップの場合、PCに詳しければグラフィックボードの交換が可能です。差し替えるにあたって、今のインタフェースはPCIExpが主流ですので、お使いのPC(マザーボード)が対応しているかを確認する必要があります。PCに詳しくない方にはおすすめできません。
メモリ容量が処理規模を決める
これからPCを購入する場合は、次の点を考慮してください。メモリの容量はマザーボード(チップセット)で決まってきます。128GBに対応したマザーボードを選択する必要があります。
- H770、Z790など H、Zシリーズは最大128GB、
- X299など Xシリーズは、256BGB
256GBに対応したマザーボードは、まだまだ高価で10万以上しますが、予算があるお客様はご検討ください
ディスプレイに関して
ディスプレイは、写真の質を判断する上で非常に重要です。高度な色再現性が求められる写真向けの4Kモニターの選び方についてまとめたいと思います。
通常、事務用等のディスプレイは、1,920×1,080ドットの解像度が標準でいわゆるフルHD対応が主流ですが、画素数でいうと200万画素しかありません。今時のカメラは2000万画素、最新の一眼カメラでは4000万画素以上ありますので、モニタで見るときは相当に縮小された画像を見ているのがわかるかと思います。現在、高スペックのモニタは3,840×2,160ドット、フルHDの4倍サイズの800万画素ありますから、事務用よりははるかに写真の細かなディティールを確認することが出来ます。
また、色域といいまして、色の表示可能範囲も重要です。色域が広ければより色彩豊かな写真を表示できる能力があります。色域には、世界のスタンダードとなっているsRGB、より広範囲はAdobeRGBとあり、一般的映像用モニタはsRGBに対応しています。カタログなどでsRGBに100%対応となっていれば優秀といえるモニタですが、低価格の事務用のモニタはそのような表示さえないかと思います。AdobeRGB対応のモニターは、いわば画像編集を仕事とするクリエィティブ向けのディスプレイとなります。RAW現像、編集を行い、画面で確認した色が印刷で表示されるかといったような方向けです(それだけ、自然界の色域は広く、逆にモニターの色域は狭いということです)。
私は写真測量で使用するモニタは、AdobeRGB対応のモニターまでは必要なく、sRGB対応の物で十分だと思っています(それでもいい値段します)。4Kの場合、広い領域を表示するため、モニタのサイズは32インチ程度は最低限必要な所(表示が小さくなりますので)ですが、メーカによりますが、10万~30万以上します。モニターは通常、メーカが変わると色合いが変わりますが、高価なモニターは工場でキャリブレーションを行って出荷しているため、一定の品質があります。値段と性能、評判を考慮して選択する必要があります。ちなみに、弊社で使用しているモニタは32インチ、sRGB対応、メーカでキャリブレーション済の14万(当時)の物です。見に来られた方は、画質の綺麗さに驚かれ、これと同じものをと要望されます。
最近、BENQとかDELLが驚くほど安い値段で高SPECなものを出していますが、飛びつかずに慎重な判断が必用です。長年評判の良いブランドで性能に見合った価格の物(その中でもリーズナブルな物があります)を選択することが大事です。高い物はそれなりの理由、逆に安い物にもそれなりの理由があります。SPECの数字にだまされてはいけません。
本記事は長い間、上位にランキングしていますが、今まで実際のPCやモニタの機種名を記載していましたが、そうしますと在庫が少ないものはすぐに売り切れになってしまいますので、記載を省略いたします。
GPU性能を生かすための設定
Metashapeのメニューで、以下のように『ツール』から『設定』をクリックします。
『GPU』タブをクリックします。PhotoScanがグラフィックボードを認識していれば、図のようにその名称が表示されます。
速さ優先であれば、下の「GPUアクセラレーション処理時にCPUを利用する」をONします。その代り、PhotoScan処理中CPUも一生懸命動くため、他の処理を並行して行いたい場合、その処理レスポンスが落ちてしまいます。そこそこのGPUを搭載しているのでしたら、通常はOFFが良いかと思います。
ちなみに、Metashapeのマニュアルでは、以下のように記載されています。弊社日本語マニュアルから引用。
— ここから —
GPUタブでは、プログラムによって検出されたすべてのディスクリート(外付け)GPUデバイスがチェックされていることを確認する必要があります。MetashapeはGPUの処理能力を利用しプロセスを大幅に高速化します。ただし、Agisoftは、重い負荷のもとで不安定な作業が発生する可能性があるため、内蔵グラフィックカードアダプタの使用を推奨していません。GPUをオンにする場合は、少なくとも1つのディスクリートGPUを処理に使用することを前提として、「GPUアクセラレーション処理時にCPUを利用する」オプションをオフにすることをお勧めします。
— ここまで —
文中の『内蔵グラフィックカードアダプタの使用を推奨していません』というのは、前述した『オンボード』の事を言っています。きちんとしたグラフィックボードを使用してくださいという事になります。
下記もご参考にください。目的とする点群ソフトウエアによって特徴とマシンに要求される性能が大きく違いますのご確認の上、ご検討ください。
以上です。