SLAMはGCPの利用が必須
SLAM LiDARを使用して測量を行う場合、GCPはどの位の間隔で配置すれば良いのか、ご存知でしょうか。RTKがあればGCPは余り使わないから大丈夫と思われているお客様も多いかと思いでしょう。私もそう思っておりました。特にドローンを使用されているお客様は、多くの方がそのように思われています。
しかし、上空を飛行するドローンと違って、市街地を歩きながらRTKで測定していると、建物の近くはマルチパスの影響でRTKの座標は瞬間的に度々飛んでしまいます。座標が飛んでしまいますと、SLAMの点群もその座標に従いますので、その部分の点群もおかしくなってしまいます。こういった理由からSLAMの公共測量の規定(案)では、RTKではなく、GCPの使用を必須としています。
そのため、使用しているSLAM LiDAR製品のIMUの累積誤差がどの位の値を持っているかを確認することは非常に重要です。この値が分かれば、GCPの配置間隔を決定することが出来るからです。IMU累積誤差は、製品SPECに記載されていればわかりやすいのですが、誤差の測定を標準化されていない為か、各社で公表はされていないようです。
一昔前のハンドヘルド製品では、一般的にXYZ誤差を5cm以内にするには、GCP間隔は30m程度という話でしたが、現在の実力どの位なのか、弊社で扱っている製品を測定してみました。
SLAM LiDARの基本原則
SLAM LiDARは、クローズドループで測定(歩行)することが基本であり、可能な限りクローズドループを取るようにすると、点群の精度と信頼性は格段に上がります。このクローズドループが難しい場合は、GCPやRTKで補正を行います。もちろん、GCPを使用する場合でも、クローズドループが可能であればクローズドにした方が良いのは言うまでもありません。
| クローズドループ | ロープを閉じない |
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| 理想的なクローズドループ経路 | 不完全かつ、理想的ではないクローズドループ経路 |
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弊社の実験では、このループをクローズしない場合にて、IMUの累積誤差を計測してみました。測定した距離に対する累積誤差が分かれば、精度5cmに対するGCP配置間隔を求める事が出来ます。
IMU累積誤差を求める
弊社では測量用にはGreenvalleyのO2シリーズを推奨しており、とても性能が高く、価格のバランスも良いO2-32/120にて検証を行いました。
O2シリーズは3グレードありますが、O2-32/120は真ん中のグレードであり、測量用として位置づけられている。SPECは32チャンネル、測距距離120mです。
下図は、ある公共施設の周りを測定した図になります。周囲の長さは、1.1kmあります。

下図は、クローズドループでの処理結果です。付属する解析ソフトウエアLiDAR360MLSの表示画面ですが、左側画面は点群、右側画面はパノラマ画像+点群の合成表示となっています。左側画面の地面に見える青の点線は測定開始後の歩行経路を示し、青の大きな点はカメラのシャッターポイントを示しています。オレンジの線は、1周して戻ってきた時の経路です。きちんとクローズドループをすることで、累積誤差がリセットされ、レイヤー化(2重、3重化)されていない綺麗な点群を得られている事がわかります。周囲長1.1kmにて2回行いましたが、2回とも完全な点群を得る事が出来ました。

下図は、ループを閉じない場合の点群です。期待通り、コンクリートのブロックが2重になっているのがわかります。

付属する解析ソフトウエアLiDAR360MLSを使用すると、コンクリート角を利用して、2点のXYZを測定して誤差を計算します(実際は強度表示にて計測します)。この測定を3回行い、累積誤差の分析を実施しました。

当初は、3回の累積誤差の平均にてGCP距離を求める予定でしたが、結果をみると、X方向は他の方向と比較してかなり良好な結果出ており、一方で、Z方向の累積誤差は圧倒的に悪く、Z方向にてGCP間隔は律速することが分かりました。そのため、Z方向の一番厳しい値にて制限を設けるのが良さそうに思われます。
平均よりも生のデータの方が感触がわかりますので、生データを以下に示します。
測定1回目
| X (m) | Y (m) | Z (m) | |
| Point #1 | 7.36 | 0.323 | 1.429 |
| Point #2 | 7.292 | 0.559 | 1.833 |
| 累積誤差 | 0.068 | 0.236 | 0.404 |
| GCP間隔 | 816.176 | 235.169 | 137.376 |
測定2回目
| X (m) | Y (m) | Z (m) | |
| Point #1 | 7.373 | 0.309 | 1.452 |
| Point #2 | 7.615 | 0.619 | 1.889 |
| 累積誤差 | 0.242 | 0.31 | 0.437 |
| GCP間隔 | 229.339 | 179.032 | 127.002 |
測定3回目
| X (m) | Y (m) | Z (m) | |
| Point #1 | 7.369 | 0.352 | 1.399 |
| Point #2 | 7.408 | 0.606 | 1.734 |
| 累積誤差 | 0.039 | 0.254 | 0.335 |
| GCP間隔 | 1,423.077 | 218.504 | 165.672 |
この結果から、GCP配置間隔は、余裕を見て100m程度で配置(ドローン測量と同程度)するのが適当と思います。一昔前の製品より格段に進歩しています。
恐らくIMUの累積誤差は、気温や地形状況、計測距離などによって変化すると思われますのでご注意ください。なお、クローズドループにした場合は、この限りでは無い事を念のために申し上げます。
SLAMは測量用機器ですので、製品の素性を理解した上でご購入頂く事をお勧めしております。
*お客様がIMU累積誤差の検証を行う場合は、ソフトウエアの設定を変更する必要があります。また、他の製品では、その設定変更を行えないソフトウエアもあり、検証不可の可能性もございます。ご注意ください。
