こんな経験はありませんか?
現地に到着し、関係者あるいはお客様と打ち合わせを行い、いざドローンをフライトさせようとすると、ドローンが飛ばない・・・。
これは、撮影の依頼者側も、依頼された側も、とても不幸な出来事です。
飛ばない原因は様々あると思いますが、タブレットとドローンがつながらない、つながっても映像が映らない、モータが回らない、プロポがピーピー鳴っている、あるいはタブレットの電源が入らない、アプリを立ち上るとログアウトされていてログインできない、と様々な事が起きたりします。お客様、関係者をずっと待たせてしまって、原因がわからず焦る・・。前回まで飛んでいたのに、なぜ?
多かれ少なかれ、ドローン関連で仕事をされている方は、おそらく100%と言っていい位、このような体験をしていると思います。これはドローンの扱いの経験値を上げていくしかないと思いますが、気づきにくいのは、ファームのアップデートによって新たな制限が知らないうちに入ってしまうというのがあります。
じゃ、アップデートしなければいいのでは?という意見もあるかと思いますが、制限区域の変更にかかわる様な重要アップデートは、一定期間内に行わないとドローンを飛行させることが出来なくなります。ドローンは、生ものと同じで常に管理しなければいけません。
今回は、私の少ない経験ではありますが、実際に経験した事や、経験していないが実際にありえるだろうというのを、分類別にトラブル事例(飛行前編)をご紹介してみようと思います。
ファームウェアアップデートによるもの
別のブログでもご紹介しましたが、空港周辺等の規制地区は、DJI社の場合、自主規制によりドローンを飛行させる事が出来ません。機体に搭載されているGPSが規制地域内の位置を認識するとモータが回らないようになっています。
昨年(2016年)までは、空港周辺等の規制地区であっても飛行出来ましたが、昨年秋から今年にかけて、ファームアップデートにより飛行出来ないようになりました。アップデートの変更内容の情報は見ることが出来ますので、常にウォッチしていればこのような対応がとられても大丈夫ですが、頻繁にアップデートされるので、変更内容を逐次確認する人は少ないかと思います。
別の例として、Lipoバッテリーの温度管理もあります。Lipoはご存知のように低温になると性能が著しく低下してしまうため、飛ばす前まではある程度保温しておく必要があります。これもファームのアップデートにより、Lipoが一定温度以下になると、モータ起動をしなくなりました。撮影の仕事には、本番やその瞬間のみというのがあるので、全く飛ばないというのは、大問題になります。これで苦い思いをした人は多いかと思います。
このように、モータ制御に関わるファームアップデートがあるため、注意が必要です。
アプリとファームのバージョン不整合によるもの
DJI社の場合、例えばドローンを飛行させる時に使用するアプリは、DJI Go4や、Ground Station Pro、社外ではLitchiといったものが存在します。これらアプリは、機体やリモートコントローラのファームウエアのバージョンと整合をチェックしています。
通常使用しているアプリがDJI Go4だったとして、例えば数か月ぶり位にLitchiで自律飛行をさせようかといったケースでは、その間ファームのバージョンの更新が進んでいたり、あるいはLitchiのアプリのバージョンが進んでいたりすると、ファームとアプリのバージョンが大きく離れ、機体に接続出来なくなります。この場合、双方を最新にアップデートするしかありません。飛行させる数日前にでも事前に動作確認していれば、現地で困るというのは防ぐことが出来ます。
タブレットに関係するもの
アンドロイド、iPad共通しますが、タブレッドは自身の温度管理をしています。内部の温度が異常に上がると自動でシャットダウンをしたり、あるいは電源OFFの状態であれば電源をONに出来なくします。(タブレッド内部には、電源と温度を管理する最低限のサブシステムがこっそり動いており、メインシステムの起動をロックします)
近年の夏は異常に暑く、保管ケースからタブレッドを取り出して電源ONしようとしても、電源がONにならない事があります。ケースに入れて外に置いてあったとしても、ケースが黒色等で直射日光を受けていると、使用出来ない位熱くなりますので、注意が必要です。もちろん、車内の放置も気を付けなければなりません。
それから、DJI Go4アプリの場合、タブレッドのバッテリー容量も管理しています。バッテリ容量が少なくなった時(30%台?)、機体に接続してもカメラの映像がタブレッドに表示されなくなります。その旨のメッセージが表示されれば親切なのですが、現状はされませんので、何が問題なのかわからず困ってしまう人もいるかと思います。
時間経過によるもの
DJI Go4アプリは、登録したユーザアカウントでログインして使用します。一度ログインすると、通常は常に自動ログインとなりますが、ある程度の時間間隔でログアウトされるようです。
使用する時にログイン出来れば問題ないのですが、その時のアカウントとパスワードを忘れてしまうと、現場でログイン出来ないという事になります。
現場に行くと、PCやネットに制限があり調べることが出来ず、ちょっとしたことでも、その場では解決できなくなってしまいます。
原因不明なもの
このブログをきっかけともなったのですが、本日事務所でインスパイア2の事前確認をしていると、プロポの電源を入れた途端、ピーピーと結構な音で鳴り響きました。メッセージは、「送信機の校正をしてください」と表示されたので、校正を実施したところ、問題なく音は消えました。
校正は、実際にやってみると、ちょっとつまずきました。2本のスティックのみぐるぐる動かせばよいと思ってましたが、加えて、左右のダイヤルも動かす必要があります。うまく完了出来ないのでネットで調べた位です。
3,4日前に動作確認してから何も変えていないので、なぜ校正を求めてきたのかは不思議ですが、このようなことが現場で起きるとつらいですね。
実は、上記に記載したタブレッドのバッテリー残量に関しても、少し前までは原因不明でした。なぜ映像が映らない時があるのか、この現象を2回経験するまでよくわかりませんでした。2回経験してその時の共通点から、タブレッド電源も監視しているのだと。
ドローンは、以前のヘリコプタとは違って誰もが簡単に飛行できるようになりましたが、反面タブレッドとアプリで制御しているため、システムは複雑にもなりました。それだけ、メンテナンス手間や予期しない事が起こりやすくもなります。
日本人の常識は、何かあればエラーメッセージが表示されるという感覚ですが、海外製品はそうとは限りません。日本製品のように親切丁寧な説明書があるわけでもありません。
お伝えしたかった事
ドローンは誰もが簡単に扱えるのでは?とお考えの方は多く、本業でドローンを使用している方は、本業が忙しくドローンのメンテナンスは、まずしません。そして、いざ本番で飛行させようとすると、上記のような問題にぶつかり飛行が出来なくなります。
このようなトラブルが発生すると、操縦者は通常の精神状態ではなくなりますので、経験不足な操縦者ほど無理をして事故が起こるケースがあります。
会社でドローンを導入予定、導入済の経営者様は、ドローンは手がかかるのだと認識をもち、現場のこのような状況をよく見ることが大事だと思います。
以上