第1回 UAV測量ソフトMetashapeとPix4Dの比較

最新の状況を鑑みて、更新しました(2023.07.11)。

MetashapeとPix4Dの違い

UAV測量に使用するSFM処理(Structure from Motion)を行うソフトウエアは、海外含めていろいろな所から販売されていますが、測量会社様はじめ日本で多く使われているのがAgisoft社のMetashapeとPix4D社のPix4Dシリーズです。

この二つのソフトウエアは、古くから存在しており、実績や価格の面で他社より1歩も2歩も突出しています。特にMetashapeは、日本でも古くからセスナを使用した航空測量に用いられてきました。

以下、MetashapeとPix4Dの比較に関する内容になります。内容は十分確認した上で掲載しておりますが、購入される場合はご自身で十分ご確認下さいます様お願い申し上げます。

Pix4D概要

Pix4Dには、SFM処理をするソフトウエアとドローンの飛行プランアプリがあります。次のラインナップがあります。

SFM処理プロダクト

  • Pix4Dmapper(航空写真測量用、農業分野で利用可能)
  • Pix4Dsurvey(写真測量/SfMとCAD間のギャップを埋める)
  • Pix4Dmatic(大規模マッピング用)
  • Pix4Dcloud(オンラインプラットフォーム)
  • Pix4Dreact(緊急対応機関向け2D高速マッピング)
  • Pix4Dfields(農業支援用にアルゴリズムを特化)
  • Pix4Dinspect(産業点検用)
  • Pix4Dengine(自動処理化)
  • など

飛行プラン

  • Pix4Dcapture(測量用途の飛行計画モバイルアプリ)
  • Pix4Dcatch(地上における3Dモデル用撮影の為のモバイルアプリ)
  • Pix4Dscan(垂直構造物点検用途の飛行計画アプリ)

UAV測量のメインとなるPix4Dmapperは、デスクトップもしくはクラウドが可能となっており、デスクトップはGCPなどの詳細な設定が可能、クラウドは簡易的な設定のみとなりますが、クラウドを使用すれば大規模処理もハードウエア投資無しに可能になります。

また、Pix4DはSFM処理ソフトウエアだけではなく、ドローン撮影を支援するPix4DCapture(無料)という飛行プランアプリも付属されています。しかしながら、ドローンがDJI製品であれば、DJI Pilot2、UgCSなどが直感的にも、機能的にも、使いやすいかと思います。

Metashape概要

Agisoft Metashapeは、全ての機能が一つのパッケージに盛り込まれています。Simple is Best. 一つのライセンスで、測量、建築用、農業用といったモデリングが可能です。処理はデスクトップのみでしたが、バージョン1.7よりクラウドサービスも開始されました。弊社でもクラウドにより処理が可能な事を確認済です。

Metashapeは、3Dモデリングソフトウエアですが、元々航空測量に特化したソフトウエアであり、古くから多くの航空会社の航空測量で使用されてきました。長い実績があるため、他のソフトよりも多くのデータフォーマットでエクスポート可能であり、周辺ソフトウエアやハードウエアとの親和性が非常に高いです。詳細は後述します。

Metashapeは多くの座標系に対応しており、特筆はアラインメント処理(オーバラップした写真から共通点を点群化=タイポイント作成)後でも処理を一から実施することなしに、処理時間ゼロで座標系を変更することができます。また、Metashapeは、例えば、カメラ座標系はWGS84系、GCPの座標系はJGD2011などと複数の座標を扱えるのが特徴的です。これらは当たり前のことだと思っておりましたが、他の点群ソフトでは対応しておりません。

ライセンス価格

Pix4Dは、プロダクトによって買取/年間/月の3形態のライセンスがあります。価格は年間ライセンス、永久ライセンス、1デバイス、2デバイスで大きく価格が変わります。日本の実税価格は永久ライセンスの1デバイスでおよそ60万前後でしょう。保守は2年目より別途発生します。

Metashapeは、永久ライセンスのみの扱いで50~55万前後です。用途は限定されませんし、Ver2.x.xまで保守無料となっております。このライセンス形態のシンプルさと、保守費含めた価格のお手軽さが世界的にシェアを持っている理由と考えます。

機能比較

i-construction観点で必要な機能としては、双方のソフトウエアとも基準点の設定、アライメント処理、点群生成、メッシュ/DEM/オルソモザイク/等高線/DEM等の生成やエクスポート、点群のクラス分け、面積、体積、長さの計測、大規模対応、また農業用(植生)、建築物用が出来ますので、ほとんど差はないと言えます。処理の制御パラメータはMetashapeの方が多く、Pix4dは簡易的です。玄人向け、一般向というコンセプトの違いなのかもしれません。

また、Metashapeは、Pix4Dと比較してアラインメント処理の失敗の少なさがあります。PiX4Dは少しセンシティブな所があり、カメラの画質や撮影時の環境が大きく影響しアライメントが失敗する事があります。半面、Pix4DはMetashapeよりもエッジがきちんと出やすいなどの特徴があります。つまり、ノイズフィリタリングと復元の正確さの相反する部分の味付けが若干異なります。正確性を追求するとアラインメントが失敗しやすくなり、アラインメントが失敗しないようにすると、復元が甘くなります。(どちらにしても、i-constructionの適切な範囲で写真を撮影する分にはほとんど問題になりません。)

上記の事から、点群ソフトはカメラとの相性があり、Pix4Dではアラインメント出来ない写真(X5系カメラが苦手)でも、Metashapeはほとんどの写真をアラインメント出来ます。懐が非常に広いため、点群ソフトを最初に導入するのであれば、Metashapeを推奨しております。他のソフトウエアと比較して処理も早く、操作性も含めてバランスが良いかと思います。点群ソフトの本質を理解するのに最も適しているソフトウエアです。

サポート・バージョンアップ対応

Pix4Dは、最初の1年間は無償サポート及びソフトウエア保守付きです。サポートは基本的にメールベースになります。代理店によっては、電話によるサポートや別途サポートプランが用意されている場合もあります。

Pix4Dは、2年目以降のソフトウエアバージョンアップ等は、保守契約(有償)が必要になります。

Metashapeは、最初の1年間はベンダー無償サポート、ソフトウエアの保守対応は、2.x.xまで無料(現在2.02)です。また、ベンダーサポートは、2年目以降も実質無料で対応してもらえます。今までの傾向をみますと、Metashapeは写真の点群と地上LiDARデータもしくは航空LiDARデータとのアラインメントなど他社に先駆けて新機能がアップデートされます。

メーカサポートは全て英語となりますので、弊社ではご希望のお客様には、技術サポート加入者様には、日本語による技術サポートを行っています。過去のサポートの内容もホームページで閲覧出来るようにしております。

使用頻度と保守、金額を考慮してライセンス形態を考える必要がありますが、どちらも使いこなすにはある程度の時間がかかりますので、長い目で考慮する必要があります。

マニュアルの日本語対応、ノウハウ

Pix4D/Metashapeどちらも日本語マニュアルは準備されていますが、ソフトウエアのバージョンアップは、ある程度のサイクルで変わっていくので、日本語対応バージョンが遅れているのはどちらも同じようです。弊社は、1ヵ月以内のリリースを心がけております。Metashapeの場合は、ここ数年、マニュアルは1年に1度更新されています。

トータルサポート観点での選択

近年、ドローンはRTKを装備したものが主流になりつつあり、点群ソフトウエアや後処理ソフトとの連携が出来るようになりました。半面、多くの知識が必要になり、RTKのドローンを購入したが使いこなせていない、点群ソフトウエアと上手く連携出来ていない、あるいは後処理では使えなかったという問題が発生します。

点群ソフトウエア、ドローン、後処理ソフト等、一貫して全体をサポート出来る販売店を購入する事をお勧めします。点群ソフトウエアはサポート出来るが、ドローンはわからない…では、UAV測量などで精度が出ない場合、解決に多くの時間を要します。弊社では、これらを導入・テストを行い、やわかりやすいマニュアルなどを作成し、一貫したサポートを行っています。

<サポート事例>

Zenmuse P1 測量の精度が出ない問題

ファントム4RTKで測量の精度が出ない問題

Mavic3 Enterpriseで測量精度が出ない問題

関連ハードウエア・ソフトウエアとのI/F

弊社では様々な優れた製品を海外から導入し検証後、販売していますが、そのうち特にすぐれているものとして、SHAREの5眼オブリークカメラと、SPH Engineering製 UgCS Ground Stationがあります。

SHAREの5眼オブリークカメラに関しては、MetashapeとPix4Dでどのように性能の違いが出るかを確認しましたので、下記リンクご確認ください。結論から申し上げますと、GCP有の時はどちらも高い精度が出るため比較してませんが、GCPフリー時ではPix4DよりもMetashapeの方が高い精度となりました。GCPフリー時に差がでるのは、たまたまではなく、MetashapeはGCPフリー時の専用のオプションが有るためです。また、MetahshapeはPix4Dとは違って5つのカメラモデルを自動的に認識し処理するため、精度も高くなるようです。

SHARE PSDK102S V3カメラの検証レポート

更にMetashapeはエクスポート出来るフォーマットが多く対応している為、UgCS Ground Stationとも相性が良いです。事前にラフ撮影した写真からMetashapeで3Dモデルを作成し、その3DモデルのエクスポートをKMLで行う事が出来ます(Pix4Dは現時点では出来ません)。このKMLをUgCSに取り込み、ビルディングモデルとしてビル点検用のバーチカルスキャンのフライトプランを作成することが出来ます。

まとめ

ソフトウエアは外国の会社のため、技術的に詳しい日本人スタッフがいる販売店を利用された方が良いかと思います。また、現在ではネット上の情報という観点では、Metashapeの情報量が圧倒的に多いです。

MetashapeやPix4dなどの点群ソフトは、ドローンというほとんどのお客様にとってはなじみのない物を扱い、そして写真測量の概念も理解する必要があります。また、点群ソフトも使いこなすのにソフトウエアの特性やコツを知る必用があります。弊社では、Metashapeを購入されたお客様には、弊社のノウハウをまとめたUAV測量トレーニングノートをリリースしているため、UAV測量が初めてのお客様でも、サポート1、2回程度で問題なく結果を出されています。

宜しければ、以下のご確認ください。

点群ソフトの比較とお勧め – Metashape/RealityCapture/DJI Terra –

以上です。

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